俳句詩~「ユダの背」

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 最近こんなことも。叙情のための叙情、写生のための写生に酔うだけでなく、もともと詩は比喩の舞踏であるのだから、気が向けば告発も予言もやるのであるから、万事嘘をつき時世の顔色を窺いながら暗喩を十二分に駆使し逆説もやる。これも同時代人の義務かと。
 以下は、10対20句で20行詩でもある。



 【ユダの背】

シンシアはモノクロでしか抱かれない
蚕蛾は午前零時に交尾する

冴ゆる月その裏側を見せぬ訳
月面に骨工房あると思います

ダダダダダ銃持つ女神ヤダ
嗚呼サハリンおばばとおらと納屋の月

雪こんこ石工ノミ打つ音のする
舌打ちも紛れて聞こゆ除夜の鐘

地震 なう チキンチキン トラトラトラ
群れて 人 ゴミ つつうらうら

ユダの背はいつも淋しい万愚節
水嵩や帯はゆるめに桜桃忌

しめやかに人逝かせます春の雪
億数千の羊の毛刈る夢のなか

ゆるゆると平和も飽いて石榴食む
老い知らぬ吹き矢の少年目刺食ふ

飛梅といふ遠き世紀の都市伝説
卯花を空木と訊くは世阿弥かな

まどろみの形而上学冬日射す
小春日の小鳥のように小食