俳句詩~「311」

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 これらの句群は、去年の夏号から今年の夏号までの一年間に、所属する結社誌に発表したものですが、これを読んで、下手だの散文句だの、なんて言わないで下さい。これはメッセージなんです。東日本地震以後、ボクはそれを延々とやっていただけなのです。同時代人の義務としてね。


【311】


地震なうチキンチキントラトラトラ

春鯰ベッドゆすりがお上手で

啓蟄ひとまずいっぷく瓦礫下

気がかりは穴出づ蛇の蝶結び

カタクリが先の尖った靴履いた

ユダの背はいつも淋しい万愚節

    *

斜交ひに死を待つ家や薔薇主人

狂人が枇杷の皮剥く臍残し

フクシマを爺さん見てる蚊帳蛍

あめゆきさんダメそこだけは茄子畑

炎昼にされた顔から国滅ぶ

ごろんと木下闇で泣いてきた

    *

秋めいて背中痒くて核のこと

いてもたっても九月の蝉はいられない

かくてまた島という字の被曝の子

つつましき島に生れて被曝の子

また一つまたもう一つ木の実落つ

ウイルス撒けばワクチン売れる冬隣

    *

マスクした憲兵立ってるゴミ置場

傘もささずに彼は雨水氏

デイヴィットあなた鉈鉈なたでここ

ミトコンドリアみると混どりあ

笑わない家政婦のミタです何か

ひがないちにち砂嵐見る

    *

傾いたまんまのポスト春二番

やられたらやり返してよ痩蛙

平成の亀鳴く亀を尋ぬらん

冴返る空より魚の鱗降る

フクシマや口を開けたらアラスカ

帰化しD・キーン氏今朝の食卓

    *

(注)本意ではないのですが、「被爆」を「被曝」と改めました。